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けれど、昨日は何と返信して良いかわからず、すべて放置していた。下手に連絡すれば、今まで秘密にしてきた気持ちを、すべて洗いざらい話してしまいそうだった。
「君とはもう会えないって、誠が……」
もう会えない。
もう、友達としては会えない。
「どう…して……?」
咲良は怒っただろうか。
恐る恐る咲良の顔を見て、ギョッとした。
大きな瞳からボロボロと涙がこぼれている。
「ごめんなさい。帰ります」
咲良はそう言って、涙を拭うこともせずに踵を返した。
「待って」
慌てて掴んだ手を、咲良は振り払った。
「その手で触らないで!」
燃えるような、憎しみのこもった目だった。今まで咲良のこんな目を見たことがない。
「あ。ごめんなさい。八つ当たり……。ごめんなさい」
咲良は何度も頭を下げて、ふらふらと帰って行った。
誠は、そんな咲良を追うことができなかった。
「咲良に……手を振り払われた……」
いつも、握っていた手。柔らかで小さな手。
もう、握ることが出来なくなってしまった。
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