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望んだものと捨てたもの
目が覚めた。
変な夢だった。
誠はフフッと笑った。
夢にしてもヘンテコだ。ランプの精がピエロ姿でチョビ髭が生えてるなんて、あり得ない。
昨日飲み過ぎたせいで、喉がガラガラだ。水を飲んで、顔を洗うとほんの少しだけスッキリした。
タオルで顔を拭っていて、違和感に気づいた。
何だか顎がザリザリする。
目の前にある鏡を見た。
「うわっ!?!?」
口周りに生えた無精髭。ガッシリとした肩幅。元々大きくない乳房は、真っ平らで筋肉質に。腕も太くて筋肉質だし、手は……。
「男の手だ……」
ゴツゴツして、骨ばっている。誠が欲しかった、男の手。咲良を守れる手。
夢ではなかったのか。
咄嗟に誠はランプを探したが、あの薄汚れた真鍮のランプは見つからない。
散らかり放題の部屋を引っ掻き回していると、古アパートの呼び鈴がなった。
「はい」
いつもの調子で玄関のドアを開けると、そこには咲良が立っていた。
「きゃあ!?」
「あ!え!?」
咲良の視線は誠の格好に釘付けだ。
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