望んだものと捨てたもの

1/7
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ

望んだものと捨てたもの

 目が覚めた。  変な夢だった。  誠はフフッと笑った。  夢にしてもヘンテコだ。ランプの精がピエロ姿でチョビ髭が生えてるなんて、あり得ない。  昨日飲み過ぎたせいで、喉がガラガラだ。水を飲んで、顔を洗うとほんの少しだけスッキリした。  タオルで顔を拭っていて、違和感に気づいた。  何だか顎がザリザリする。  目の前にある鏡を見た。 「うわっ!?!?」  口周りに生えた無精髭。ガッシリとした肩幅。元々大きくない乳房は、真っ平らで筋肉質に。腕も太くて筋肉質だし、手は……。 「男の手だ……」  ゴツゴツして、骨ばっている。誠が欲しかった、男の手。咲良を守れる手。  夢ではなかったのか。  咄嗟に誠はランプを探したが、あの薄汚れた真鍮のランプは見つからない。   散らかり放題の部屋を引っ掻き回していると、古アパートの呼び鈴がなった。 「はい」  いつもの調子で玄関のドアを開けると、そこには咲良が立っていた。 「きゃあ!?」 「あ!え!?」  咲良の視線は誠の格好に釘付けだ。     
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!