それは突然やって来た

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午前五時半過ぎに店へ着くと、シャッター前には既に女の子二人が身を寄せ合い座っていました。 しかしその表情は比較的明るくて、信号や街灯が消えていなかったなら、まるでコンサートのチケットのための徹夜組みたい。 この、のんびり感がジャパニーズアラスカ民クオリティかもしれません。 そして続々と人がやってくる。ほとんど近所のお得意さん。 「いやあービックリしたよねえ」 「おっきかったねえ」 「信号消えてるねえ」 驚いたせいなのか、皆さん ちょっとぽーっとした感じ。 一応安否の声をかけてから、店へ入って一旦シャッターを閉めました。 うへっ、店内が酒くさい。 陳列してたワインが三十本ほど割れて、欠片と中身が売場とトイレの中まで飛散っていました。 もったいねえええ。 朝一番レジのサバ藤くんが、ひきつった笑顔で必死に片付けてます。手伝いながら聞くと 「えーと、本部から開店しろと連絡入りました」 あー、開店するのね。 さすが本部、こんなときでも人使いが荒いな。しかも二番レジ来るまでの三十分間、レジはサバ藤くん一人じゃん。 うちの店は店長が二年以上いません。本部からの応援はなし、業務に関する支援部も来ない、むしろこんな急な事態に来るわけがナイ。 現場のスタッフで仕切らねばなりません。 やべえ、見に来ただけなのに帰れねえ。 開けるならまずこのワイン片付けなきゃ、と急ぐけど、何とも量が多い。そのうち開店時間の六時になり、お客さんが入ってきました。
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