第8章

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ふたり、湖が見渡せる丘の地面に並んで座り、傾いてきた陽の光が反射して金色に光る湖面を眺めていた。 「てっきり、水遊びしたいんだと思ってバスタオルとか用意してきたんだけど、眺めるだけで良いの?」 「良いよ。ただ、こうやって自然に囲まれた場所に来たかっただけだ」 「ふーん…」 幼い頃、好きになった人。大切な人。 心臓を鷲掴みにされた日のように自然に囲まれている場所で、告げたい事があった。 隠れ場所も無くて、雨の匂いと雷の音が足りないけれど。 影志は、ルドーと旅に出る事を承諾していた。 澄夜とは別れる、陽治としては、二度と会わないだろう。だから、お前はお前の好きにすれば良い。 そう、告白するつもりだ。 永遠の離別の言葉。 「ねぇ、これ…」 先に口を開いたのは澄夜だった。 差し出してきた、小さな紙袋。 何も買うなと言ったのに、あの雑貨店の物だ。 「これ…って」 「ごめん、何もいらないって言ってたけど、見つけたら、どうしても渡したくなって」 言うつもりの文句は飲み込んで、包み紙を開いて中を見て、今度は息を呑んだ。 だって、コレは、 「…ポンちゃん、好きだったよね。ごめんね、俺は、今のお前が何を好きか、その子を今でも好きかは、解らない。でも、見た瞬間、なんだかとても懐かしくなって、お前の手元に置いてあげたくなった」 「……あ…りがとう」 驚愕に、自失状態だったが何とか、お礼だけは喉の奥から絞り出した。 ガラスで出来ているコレは、あの陽治が事故に遭った日、喧嘩の原因である壊れた物と全く同じ物だったからだ。 次回更新日、8月23日の日曜日です。 いつも読んでくださって、ありがとうございます。 お盆を、ゆっくりお過ごし下さいませ。
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