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片割れが主役の集まりが終わって暫く経てば、沢山の彼の友人達は皆帰って行った。
会場を出て、家に帰る道すがら、片割れは、双子の弟である自分にではなく、彼の恋人に抱き締められていた。
家に着けば、
「上がって行くか?」
の確認も無しに彼の恋人は中に入ってきた。
しょっ中ウチに来ているから、勝手知ったるというやつだ。
お茶を持って片割れの部屋に行ってみれば、彼の恋人は彼を膝に乗せてベッドに座っていた。
「….お茶」
受け取りそうにないので、3つ入れてしまったお茶の乗ったお盆を、ベッドのサイドテーブルに置く。
二人っきりにしてやろうかとも思ったが、紙のように白い顔をしている彼の恋人が心配というのもあったし、彼の恋人が自分に言いたい事があるだろうと思い、彼らの隣に座った。
血の気を失って白い顔を覗き込めば、虚ろな目をしている。
暫く待ってみたが、彼の恋人は何も言わない。
だから、自らが水を向けた。
。
「…俺が…」
このままでは、消えてしまいそうな男の関心を、少しでもこちらに向ける為に、言わなければならないのに、口から喉奥にかけて氷が詰まっているように、声が出ない。
震える手でサイドボードのお茶を掴んで飲み、そうしてなんとか、
「…俺が…、俺の方が死ねば良かった…か?澄夜」
と最後の方は殆ど掠れ声で問えば、虚ろな目をしたまま、澄夜は、片割れが入った箱をぎゅっと抱き締めて、僅かに頷いた。
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