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「うん…、でも、本当にそっくりだなぁと思ってね。…その、俺を好きだと訴える熱を孕んだ瞳も…」
思わず、澄夜の首に絡む手を外そうと両手で掴む。
ようやく、逃げなければという、生存本能が身体を突き動かした。
持っていた茶器は、中に残っていたお茶で、あっちこっち濡らしながら転がり落ちる。
「なっ…に言ってやがるっ!自意識過剰だっ、バカっ!!」
「…本当に?俺のこと、好きじゃないの?陽治といる俺を、ずっと…ちらちらとそんな目で俺のことを、見ておいて?」
「チッ…バカ言ってねぇで離せ。茶、転がったから」
舌打ちして目を逸らすと、あっさりと澄夜は手を離した。
奪われた体温は戻らないばかりか、冷たい手は離れたのに、痛い程の冷たさが全身を支配している。
転がっている茶器を拾って、お盆に乗せた。
「…拭くもの取ってくる」
澄夜一人にはしたく無かったが、高鳴る鼓動と冷えて強張る身体を落ち着かせたかった。
何よりも、今、平静を装って澄夜と接する自信が無かった。
澄夜の言うことは、図星だったからだ。
立ち上がったところで、
「…もし、違うと言うのなら…俺に、死ねと言ってくれないか。…お願い」
言われた言葉に、驚いて振り返れば、悲しみと懇願に満ちた澄夜の表情。
「だっ、ダメに決まってんだろ!?」
「…跡を追わないって、約束させられたんだ。でも…無理みたいだ」
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