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いつまでも、澄夜からの返事は無くて、言葉を掛けてもらう資格さえ失ったのかと自嘲していると、雫が、薄暗い地面を濡らしている事に気が付いた。
初めは、理解が追い付かなくて、まさかと思って顔をあげてみれば、澄夜の頬をいく筋も涙が伝っていた。
「す…みや…」
「…あいして…いたんだ…」
澄夜が震える声で絞り出しながらたどたどしく紡いだ告白に、
「…わかってる。ずっと、お前は陽治だけを愛してたよ」
代わりになって、なんて言って影志を抱いたのは、アレはただの憎しみの発露で、お前の身も心も陽治への美しい愛のみが詰まったままだと言葉を続けようとして、
「影志…お前を…」
澄夜の続けられた自白に、一瞬、声が出なくなった。
真っ白になった頭を、なんとか立て直し、
「なっ……に…を」
言ってんだと尋ねようとしたら、向かい合うように止まっていた車のライトが急に点灯し、眩しさに目が眩んだ。
車は発進し、曲がる事もせずに、何故か影志達を目掛けてスピードを出しながら突進してきた。
驚きで動けずにいると、澄夜が影志を庇うように突き飛ばした。
重たく腹の底に響くような音が駐車場にこだまする。
澄夜のおかげで影志はギリギリ、車に当たらない場所へと避けられたが、ならば影志を突き飛ばしたせいで、前のめりになり倒れ込むような形となった澄夜は?
眩しさに慣れた視界に映るのは、車と壁の間にある塊。
運転席から人が降りてきた。
影志はふらつきながらも、塊に近寄って、しゃがみ込みながら手を伸ばす。
触れた先は澄夜の頭だ。
嫌な感触の液体が手を濡らす。
影志の頭上では、先程、跳ね飛ばした車から降りてきた人物が高笑いを上げている。
茫然とその人物を仰ぎ見ながら、思わず、
「…コーギン…な、んで?」
聞きながら、ゆらりと立ち上がって殴りかかった。
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