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隣に座っても、澄夜は直ぐには話し始めなかった。
影志に伝える為の言葉を探している沈黙が心地良かったから、急かさずに待つ。
やがて、
「ずっと惹かれていたんだ…」
繫ぎ止めるように、影志の指に指を絡ませて、告げる想い。
「あの日の夜に、側に居てくれたのは陽くんだと思った。でも、あの子を見つめて過ごして行く内に、違和感があって違うって心の何処かで気が付いていたみたいだ。同じように視界に入る影くんを、陽くんを見ているつもりで、目が、俺の意識が追いかけていた」
久しぶりの影くん呼びと告白に、絡む指に力が入る。
「影くんが、喧嘩ばかりしていて、怪我して帰って来た日、俺、初めてその肌に触れたよね。仄かに香った汗の匂いと、熱さが忘れられ無かった」
溶けそうな声で言われて、もう、何度も触れられた腹の奥が疼いた気がした。
「けど、俺は最低な酷い男だから…」
空いている片手で顔を覆って、それまでの告白とは全く違う冷えた声を落とした。
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