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「…ずっと…自分の心も、陽くんの心も誤魔化し続けて来た。俺が本当に求める相手は、陽くんじゃないって、陽くんと影くんに知られてしまえば2人とも失ってしまいそうで怖かった。あの日全てを失った俺に与えられた温もりは、唯一だったから。それなのに間違えるなんて、やっぱり、母親にも愛されないで守れない奴の心には愛情なんて存在しないし、こんな男を好きになったのは2人の勘違いだった、もう澄夜なんて要らないってなるのを恐れて…」
離れた澄夜の手を掴んで引き寄せ、丸まって震える背を撫でる。
「…そんなことにはならねぇよ」
影志も陽治も幼い頃から澄夜が2人に注いで来た確かな愛情を知っている。あの頃は親愛だったけれど、温かかった。
澄夜は首を横に振る。
「いいや…、そうした方が良い。だって…俺の…俺が…俺が優柔不断で…俺の態度が……俺が陽くんを…陽治を不安にさせたせいで……死なせた…俺が殺したんだよ。……俺の方が死ねば良かったのに…」
まるで溺れているみたいに苦しげな呼吸と音で紡がれた、澄夜にしてみれば罪の告白に、影志は無言で立ち上がると、自身の部屋へと向かって、引っ越して来た日に奥へとしまい込んだ包みを手にして再び元の位置へと戻って来た
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