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終章
やっと見慣れた風景の場所に帰ってきた。
「墓参りしてから帰るんだったか?」
「ああ。一緒に来るか?」
後ろを歩くルドーを振り返って聞けば、笑って首を横に振り、
「…いや、半年振りに会うんだ。兄弟2人だけで積もる話もあんだろ」
と、返された。
「ん、そうだな」
穏やかに微笑んで肯定する。
「…色々あったけどよ、楽しい旅だったぜ。ありがとよ。またな」
「こっちこそ、ありがとうな。今度遊びに来てくれ」
「おうっても、暫くは邪魔したくねぇから落ち着いたらな」
笑って手を大きく振り、半年仕事で連れ添ったルドーと別れた。
澄夜とはようやく想いは通じ愛し合い、離れたくないという願いは一緒だったが、依存はしたくない。
澄夜と影志は今度こそ互いなしでは生きていけないだろう。
ただ、それは四六時中ベッタリと側にいる事ではない。それこそ、本当に愛は歪んで生きていけなくなる。
陽治という共通の傷であり、家族として大切な存在があるからこそ、尚更。
離れていても、毎日、電話や心の中で愛を紡いでいた。
旅先であったことや近況を話したくて陽治の墓へと向かう。
墓の前には、今日帰るという連絡くらいでここに寄ることは何も言っていないのに、愛しい人影が見えた。
「おかえり、待ってた。会いたかったよ、影くん」
ルドーと旅に出る事をゴネたり拗ねたりしながらも、最終的には頷いて、笑顔で見送ってくれた愛しい人。
「ただいま、スーにぃ」
笑顔はひとつも変わる事なく。
影志と澄夜は強く抱きしめ合った。
何処からか陽治の二人を呼ぶ声が聞こえた気がした。
END
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