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「 やっぱ、今日はまだ帰んねぇ」
ホテルのベッドの上で、シャワーを浴びてきてバスタオルを巻いただけの女が、電話しているのとは反対側の耳に、息を吹きかけながら、
「早くぅ」
などと甘く囁き、耳朶を舐めてきた。
電話の向こうでは、
『え?でも今日の昼は新しく出来たレストランで食事したいって言ってたから、予約取って特別なデザートも用意して貰っておいたよ?』
「けど、その予約って一時間も前だろ?もうキャンセルされたんじゃねぇの?」
『大丈夫。お前が迎えは要らないから先に行ってろって言ってたから、先に来て座って待ってるから。今からでも、食事やデザートを出してくれるよ』
「ふーん」
待ちきれない女の赤いマニキュアを塗った指先が、ズボンのチャックを開けて、下着の中まで潜り込み、中のものに悪戯し始めた。
「いや、やっぱり行かねぇ。んじゃあ、切るわ」
『え、そんなぁ。まあ、仕方ないね。ね、…夜には家に帰ってくるんでしょう?』
「…ああ。わかってる。」
電話を切った途端、女が口付けてくる。
「愛してるわ」
名前を呟いて吹き込まれた愛の言葉を背中に手を回して、受け入れた。
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