第五部 三 亮弥の答え

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「だからって、俺が側にいて何をしてあげられるかなんて、本当にわからないし、俺が優子さんを傷つけることもあるかもしれないし、無責任なこと言えないけど……、でも、それでも俺は、優子さんの側にいたいです」 「で、でも……」 「俺のこと信じられないとか、容姿とか、年齢差とか、子供がどうとか、他に何が来たって、俺にとっては全部小さいことなんですよ、優子さんを失うことと比べたら。だって俺は、ずっと優子さんみたいな人を探してたんです。嘘とか悪口とか言わない、心の綺麗な人。本当に嘘偽りなく優しい人。せっかくその人が目の前にいて、しかも俺といてちょっとでも幸せだと思ってくれるのなら、離れる理由なんかないです。だから――」  亮弥くんは腕を緩めて体を離し、私の目を見た。  真っすぐで、強い意志のこもった瞳が、街灯の灯りを湛えて美しく光っている。 「優子さんが俺のこと信じなくても、俺は俺の意志で、優子さんの側にいます」  強い光に()てられるように、心が塗り替えられていくのがわかった。  私は愚かかもしれない。  人には裏の感情があって、決して表面だけで信じられる存在ではないと、知っているはずなのに。  誰も私のことなんて理解しないと学んできたはずなのに。  もう二度と、誰に心を動かされることもないと思っていたのに。  自分の気持ちさえも信じられないのに。  なのにまた信じそうになってる。  この人だけは私を受け止めてくれると、期待しようとしている。  ううん、それよりも、もっとわかりやすく、もっと単純に。  私の話を言葉どおりに受け止めて、こんなに言葉を尽くして理解を伝えてくれる亮弥くんを、好きだと、失いたくないと、抗いきれないほどの強い感情が込み上げた。  ぱたぱたと涙が頬を流れ落ちていく。  亮弥くんの指がそれを優しく拭う。  私の負けだ。  返事をしなければと、口を開く。 「私は……」 「はい」 「私は、どういう返事でも、亮弥くんの思いを受け入れようと、決めてたから……」 「はい」 「亮弥くんが、こんな私でも、本当に良いのなら、よろしくお願いします……」  目の前の美しい顔が、みるみる満面に笑みを浮かべていく。 「っしゃー!!」  今度こそ本当に安心しきった、喜びに溢れる亮弥くんの顔を見て、私の胸はなすすべなく甘く軋んだ。
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