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「自炊? するの? 亮弥くん」
「その、したいな、って話で……。でも料理とか全くわからなくて」
今日は週末デートの日。
汐留で定食ランチを食べていたら、亮弥くんが切り出した。
「姉の彼氏が、なんていうかすごい……、チャラいっていうか、軽いっていうか……、なんかそういう人なんですよ」
急に何を言い始めたのかと、ちょっと笑いそうになった。
「そうなんだ」
「でもその人、料理上手いらしくて、休日とかちゃんと料理してるって聞いて、すごいなと。単純だけど、案外しっかりした人なのかも? とか思っちゃって……」
「確かに自炊できる男の人って印象良いね」
「やっぱり!? 俺もそう感じて、やっぱり自炊くらいできたほうが良いなって思って……。でも、何からやればいいかわからなくて、まだ何もできてないんです」
「そっか……」
亮弥くんは料理できない派なのか。
「優子さんは、その……、自炊とか……」
その控えめな聞き方に、私が料理ができない可能性が多分に含まれていて、ちょっと心外であると同時に、亮弥くんの細やかな気配りに感心した。
「亮弥くん、私が料理できないと思ってるでしょ」
「そ、そんなことは……!」
「料理ができないから独身なんだと思ってるでしょ」
「思ってないです!」
必死で手を左右に振る亮弥くん。たまにこうしてからかうと面白い。
「まあ、SNS映えするような華やかな料理はできないけど、普通の家庭料理なら、ひととおりできるよ」
「マジっすか」
一瞬目を見開いて、すぐにアッという顔になったのを見て、私はやっぱりと思って笑ってしまった。
「スミマセン……、いや、優子さんがこの上料理上手だったら、もう本当に、非の打ち所がないと思って……」
「非の打ち所はたくさんあるよ。それで、何が作れるようになりたいの?」
「なんだろう……。何が簡単なのかも何もわからないんですよね……。ハンバーグとか?」
「ハンバーグはけっこう手間暇かかるかな」
「えっ、そうなんですか? それじゃ、簡単なのは何がありますか?」
「う~ん……。お家に炊飯器はあるの?」
「あります。使ってないけど」
「それなら、まずは野菜炒めでも覚えたら? フライパン一つで作れるし、炒める順番さえ間違わなければ失敗しないだろうし」
「野菜炒めかぁ、なるほど……」
「野菜炒め一つあればご飯のおかずになるし栄養摂れるし、いいと思うよ。他にも品数が欲しければ、最初は買い足してもいいし」
「たしかに」
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