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「よければ作り方教えてあげるけど」
「えっ……!」
キラキラした瞳がこちらを向く。
「ウチ、狭いから作業しにくいかもしれないけど、良ければ」
「えっ、優子さんちに行っていいんですか!?」
「いいよ、彼氏なんだし」
ここで亮弥くんの瞳が輝きを増したので、私は気を逸らすように付け加えた。
「いきなり私の手料理ごちそうするよりは、一緒に作って食べたほうが、気が楽だし……」
「なるほど、たしかに。優子さんそういう気が張るの、苦手ですもんね!」
亮弥くんは、オッケー、了解、という感じで頷いた。
「じゃあ再来週はそれやろっか」
「はい!」
午前中に部屋の掃除を済ませて、午後から会って、夕方に買い物して、作って、夜ごはんに食べるのでいいかな。他にも手すきで何かもう一品作れるだろう。
目の前で嬉しそうに微笑んでいる亮弥くんを見て、私の中にまた、好きだな、という気持ちが湧き上がる。
「ね、今の話の流れとは関係ないんだけどね」
「はい」
「今さらなんだけど、聞いてほしいことがあって」
「何でしょうか」
「あのね、私、亮弥くんのこと、ちゃんと男性として……好きだよ」
一瞬、亮弥くんは呆気に取られたような顔をした。
かと思うと、その目はみるみる喜びで溢れていく。
「知ってました」
眩しく笑顔がはじけた。
「優子さんが、好きでもない相手と、わざわざ心を開いてまでつき合う理由ないじゃないですか。だから自信あったけど、優子さん自身が納得できるまではちゃんと待たなきゃと思って、待ってたんです。気持ちが固まったら、必ず教えてくれるって、わかってたから」
「亮弥くん……」
「俺、けっこう根気強いでしょ」
そう言って、無邪気な笑顔を見せる。
「でも嬉しい。やっぱり言葉で聞けると、最高ですね。ちょっともう、しばらく顔が戻らないかも。スミマセン、やばい」
頬をさすりながら言う亮弥くんを見て、私もつい口元が緩んでしまった。
「亮弥くんは根気強いよ。だからこそ、私もここまで来れた。ありがとう、好きでい続けてくれて。好きにさせてくれて――」
これからは、お互いの気持ちをできるだけ先まで繋いでいけるように、私も努力しよう。
せっかくもう一度、好きになれる人に出会えたのだから、大切にしよう。
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