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お店を出て、ゆりかもめの駅に向かって歩き出した。今日はこれから、会社でもらった招待券片手に、東京ビッグサイトへ展示イベントを見に行くのだ。
汐留の高いビル群が私達を見下ろしている。そのビルの上には抜けるような秋の空が広がっている。
「ところで優子さん、気づいてないでしょ。今日、再会してちょうど一年なんです」
「えっ」
私は去年の記憶を探った。
確かに、あれは秋が深まり始めた、十月の下旬だった。
「一年後にちゃんと両想いになれて、嬉しい」
亮弥くんは私の右手を取ってぐっと引き寄せた。
私は驚いて亮弥くんを見上げた。
「手くらい繋ぎたいって、ずーっと思ってたんですから!」
「うん、ごめんね」
体を寄せた左腕に寄りかかるようにしながら、愛おしさがこみ上げるままに指を折り曲げて亮弥くんの手を握り返す。
その瞬間、胸がドキンと鳴った。
私達の手は、なんの違和感もなくぴったり合わさった。
あまりにも自然に馴染むその手の心地よさに、なんでもっと早くこうしなかったのだろうと思いながら、新しい幸せと安心感が体中に広がっていくのを感じていた。
〈終〉
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