第一部 三 突然のデート

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 待ち合わせ時間は十時半。場所は上野公園にある国立西洋美術館の前。  私は吾妻橋にマンションを借りているので、上野公園へは二十分くらいで行ける。十時頃に部屋を出て、十分前には待ち合わせ場所に着いていた。  午前の公園は一段と空気が冷たくて寒いけど、それが気持ちよくもある。その日はよく晴れていて、日差しがじわじわと空気を温めていくのを感じながら愛美ちゃんの到着を待っていた。  すると、しばらくして携帯にメールが届いた。場所がわからなかったかな、と思いながら見てみると、こんな内容が書かれていた。 “おはようございます! 優子さんすみません。ちょっと風邪引いちゃったみたいで、行けなくなっちゃいました。申し訳ないので、代わりに弟を行かせましたので、よろしくお願いします! また今度ご一緒させてください。弟(亮弥)の連絡先 090-XXXX-XXXX”  ええーっ……?  さすがにこれには困ってしまった。わざわざ弟さんに来てもらわなくても、別に私は一人でいいのに。ていうかいくら顔見知りとはいえ、代理で弟をよこすなんてある!?  でももうこちらへ向かっているものを、途中で追い返すようなのも気が引ける。  どうしようか迷い、私は愛美ちゃんに電話をかけた。 『もしもし……すみません……』 「おはよう。風邪は大丈夫?」 『すみません、優子さんに移してもいけないしと思って……』 「それはいいけど、来られないなら私は一人で構わなかったのに……。ね、弟さん若かったよね、いくつ? 上野は来たことあるのかな? 美術館の場所も初めてだとわかりにくいかも……」 『あ、大丈夫だと思います。携帯で調べたら道順もわかるので……。普段それでどこでも行くんで』 「あ、そうなの……」  そういえば最近は携帯でルート検索もできるってどこかで聞いたっけ。 『弟は十八です。早生まれなんでまだ誕生日前ですけど、一応もう大学生なんで、大丈夫です』 「だ、大学生……十八……」  どうりで幼く見えたはずだ。 「とりあえず来るのを待ってみるね。愛美ちゃんもお大事に」 『はい……よろしくお願いします』  電話を切って、大きくため息をついた。  十八歳の子と、うまく話せるだろうか。向こうもどうしていいかわからない状態だろうし、気まずすぎる。とりあえずレンブラント展は、無理につき合わせるわけにいかないし、延期したほうが良さそうだ。
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