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第一部 一 出会い
四十年近くも生きていると、思いがけない人から好意を持たれることも稀にはあるものだ。
例えばほとんど話したこともなかったクラスメイトだったり、お互いに全く恋愛対象外だと信じていた同僚だったり、それから、酔っ払った後輩の女の子を介抱した末、迎えに来てくれた彼女の弟――それも十二歳も年下の、キラッキラの男の子だったり。
現在三八歳。
もはやおばちゃんの域に入っている私に、「好きです」なんて真剣な顔で言ってるこの男の子との出会いを思い返すには、八年ほど遡らないといけない。
八年前、彼は十八歳。そして八年前と言っても、私は既に三十歳。
普段接する限りでめいっぱい年下の新入りくんでさえ二二歳だ。十八歳ともなると、上司の子どもさんとか親戚の子とかそういうレベルの認識で、もう子どもとしか言えない。未成年。保護すべき存在だ。
だから子どもが三十歳のおば……お姉さん、に恋愛感情を持つなんて、現実にそうそうあるとは思えないし、百歩譲っても「懐く」くらいしか考えられない。というかそんなことすら考えない。自分とは無関係の他人、ただの「後輩の弟さん(若者)」なのだ。
ただその子がとても可愛かった――カッコいいと言うべきなのかもしれない――から、「愛美ちゃんの弟さんイケメンだねぇ」くらいの印象はあった。でも、それだけだった。
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