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心の汚れか……。気にしたことなかったけど、確かにいつも何かしら嫌な気持ちってあるのかも。大学かったりーなーと思ったり、バイト先で腹立つ客が来たりとか、電車混んでて座れねーとか、冷凍庫のアイス姉ちゃんに食べられたりとか、いろいろ。
確かに絵を見てるときはそういうの忘れてた。絵っていうか、どちらかと言うと見ていたのは優子さんのほうだけど。
「……ちょっと、わかるかも」
そう言うと、優子さんは“おっ”という顔で俺の目を覗き込んだ。
「優子さんも心汚れるんですか?」
「汚れるよ~。汚れる汚れる。もっと綺麗でいたいと思うよ」
「心がですか? 綺麗でいたいとか考えたことないな……」
「んー、考えないのが普通なのかもね」
「元々が綺麗だから汚れとか気づくんじゃないですかねー」
ナイフとフォークを動かしながら何気なく呟いて、ふと優子さんを見たら、すごく優しい顔で微笑んでいた。
ヤベェ、超綺麗なんだけど……。俺何か良いこと言った? 何か優子さんに刺さった?
そのままなんとなく無言になって、お互い少し照れ笑いみたいになりながらごはんを食べた。なんか、良い感じな気がする。すげぇデートっぽい。超彼氏彼女っぽい。
「亮弥くんの顔も美術品みたいに綺麗だよね」
言われて、俺はなんとなく目を伏せた。
「そうですかね……」
「ごめんね、言われるの飽きてる?」
「えっ」
ビックリして顔を上げた。そんなことを指摘されたのは初めてだった。
「当たり?」
「えっと、その、ちょっとだけ……」
「そうだよね、それだけ整ってたら皆から言われちゃうよね」
「そうなんです……。あっ、なんか認めるのも嫌味かもですけど」
「あはは、いいじゃん、事実なんだからさ。でも亮弥くんくらいイケメンでも、言われて卑屈な気持ちになっちゃうものなの?」
「いや……なんていうか顔ばっかり言われて、それ以外何も良いとこないし、逆に期待外れみたいな感じになるんで……」
「へぇぇ?」
優子さんは目を丸くする。
「私は今日話してみていい子だなーと思ったし、今のところマイナス要素見つけられてないけどなぁ。何かある?」
そう言いながら首を傾げて顔を覗き込まれた時、俺は、優子さんが俺の運命の人に違いないと思った。こんなに気持ちを察してくれて、俺に幻滅しないでくれる人なんて、他にいるはずがない。
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