第一部 四 夢みたいな時間

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「優子さんはそういうのないですか? 美人って言われすぎるみたいな……」 「私は美人じゃないからね~。そう言ってくれる人もいるけど、社交辞令じゃないかな」 「はぁ!?」  と叫びそうになったけど、ギリギリこらえた。優子さん自分の美しさに気づいてないの? 嘘だろ! 社交辞令!? そんなわけあるか! 「俺は超綺麗だと思いましたけど……」 「え、ほんと? 変わってるね」  変わってるのは優子さんだろー! 「じゃあ今日また会って、がっかりさせちゃったかな? よく見るとそうでもなかったでしょ」  言われて俺はじっと優子さんを見た。  切れ長でぱっちり大きな目と大きな黒目。  筋が通って形のいい鼻。  適度な厚みで色気のある唇。 「……整形とかしてないですよね?」 「してないです」 「じゃあ黒縁のカラコン入れてます?」 「普通のコンタクトは入れてる」 「つけまつげもしてないし、全然顔作ってないですよね?」 「私メイク苦手でね、センスないからあんまり凝らないようにしてるの」 「イヤそのままで超綺麗っすよ」 「あはは、ありがとう」 「お世辞じゃないですから!」 「はいはい」 「いや、マジで!」 「こんな顔でも亮弥くんにはヒットしたって受け止めときます」 「いや、俺だけじゃないですって! 優子さんのファンすごく多いって姉から聞きました」 「ええ~っ、そんなのいないいない」 「だいたい姉がファンですし」 「君達姉弟が特殊なんだって」  そうなのかな……、そう言われると自信なくなってきた。でも本当にそうなら、ライバル少ないってことじゃん。ラッキーじゃん! 「それじゃ、優子さんは? 優子さんは俺の顔、好きですか?」 「かわいいと思います」 「カッコいいじゃなく?」 「う~ん、一回りも年下だからねぇ。いやでも、綺麗だよ。すごく整ってる」 「好き?」 「好き好き。ずっと見てられそう」  めっちゃ軽い。めっちゃ軽いし誘導尋問だけど、嬉しくてにやける。 「ならいいです」 「あはは、いいんだ。でもね」  優子さんは優しく笑って言った。 「顔以外にももっと自信持っていいと思う。私は亮弥くんみたいな子、好きだよ」  胸がドキンと鳴った。  そのまま心臓の音が耳まで響いて、顔が熱くなっていくのを感じた。  どうしよう。すげぇ嬉しい。  そういう意味じゃないってわかってるけど、ドキドキして舞い上がってしまう。  優子さんに好きって言われる破壊力、やばい。
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