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呼び捨ての返事が返ってきて驚いたものの、もしかして元カノなのではと気づいた桜井さんは、正樹に詰め寄って聞き出した。
最初は否定していた正樹も、こんな話をしているのを他のメンバーに気づかれたら困るからと、厳重に口止めした上で交際していたことを認めた……が最後、いつ頃つき合っていたのか、期間はどのくらいか、なぜ別れたのかを根ほり葉ほり聞かれる羽目になったようだ。
私はあの分別ある正樹の口を割らせるとは若い子のパワーってすごいなと感心するとともに、彼に少なからず同情した。
「それで、なんで別れたって言ってた?」
「優子さんに振られたって言ってました」
その程度なのか、と少しホッとした。
「全部聞いてるなら、何も否定しません。でももう昔の話だし、お互いとっくに終わったことだから、桜井さんが西山さんを好きなら私のことは気にしないでくれたらいいなと思います……」
「もちろんそのつもりなんですけど、その前に聞いておきたいことがあるんです」
「何でしょう」
「優子さんも西山さんもどちらも素敵な人なのに、どうして上手くいかなくなったのか見当もつかないんです。私が言うのも悔しいんですけど、正直理想のカップルだと思います。どうして西山さんを振ったんですか? 他に好きな人ができたとか? それとも、西山さんに何か表面に見えない重大な欠点でもあるんですか?」
なるほど。確かにそこは気になるところだろう。正樹のような完璧に見える人ほど、驚きの欠点を秘めていることもあるからな。
でもそんなものはなかった。
簡単に言うと、正樹の言葉に私が勝手に傷ついて、気持ちを取り戻せなくなってしまった。ただそれだけのことだった。
「西山さんは優しい人だったよ。何の不満もなかった。ただ、状況的にちょっと余裕がなかった時があって、噛み合わなくなっちゃってね。タイミングが悪かったのと、私の性格のせいなんだろうな……」
「優子さんのせい?」
「うん。桜井さんみたいなハッキリした子のほうが、あの人には合ってるかもね」
「その内容って詳しくは聞けませんか?」
「う~ん……」
しばらく考えてみたけど、そんな話をしても誰の得にもならないと思った。
「ごめんなさい、言えないです」
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