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しかも社長秘書になったのも、別に能力を買われたわけでもなく、社長が私の顔が気に入ったからという謎の理由だったことを先輩秘書から聞いて、相当凹んだりした。
「ま、それはいいんだけどさ。つき合うの? 桜井さんと」
そう聞くと、正樹は一瞬驚いたような顔をして、
「いや、さすがにちょっと年下過ぎるかなと……」
と視線を逸らしながら言った。
「あー……まあね」
その時私は亮弥くんのことを思い出した。
「たしかにけっこう大きい差だよね……」
「何その実感こもった言い方」
「でも男の人のほうが年上ならそんなにおかしくないんじゃない?」
「いや、逆にその……あんな若い子が好きなんだなみたいなさ……」
「なるほど」
女性の立場から見ると男性が年上だとリードしてもらえていい気がしてたけど、逆から見るとそういう認識もあるのか。ましてや良識の固まりのような正樹なら、それを恥ずかしく感じる気持ちは少しわかる。
「でも二七歳と……正樹が三八? ならそんなにおかしくない気がするけどな……」
「そうかな……」
「正樹が好きになれるならいいんじゃないかな」
私の場合は年が離れていること自体がダメだったんじゃなく、恋愛対象に見られないことがダメだったんだし。
「優子は彼氏いないの?」
「ああー……、私は、ちょっと、いないですね……」
「あれからずっと?」
「う~ん……そういうわけでもないんだけど……」
「優子もだいぶ年下の子に言い寄られたの?」
「いや、まあ……、でもそれはあの、つき合ってはいないよ」
「それ以外にもいたんだ」
「えっと、まぁ……どうかな」
「優子が否定しない時は、イエスなんだよね」
正樹は、ははは、と優しく笑った。
実は特筆する程でもないけど、正樹の後につき合った人が一人いた。バーで知り合って、半年ほどつき合ったけど、最終的には正樹がいかにいい男だったかをしみじみ思っただけだった。
「俺はね、ずっと一人」
「えっ、そうなの?」
「うん」
「それじゃ、桜井さんとつき合うだけつき合ってみればいいじゃん。嫌いじゃないんでしょ?」
「優子はもう俺とつき合ってはくれない?」
一瞬、周囲の音が消えて、息が詰まる感じがした。
「え……」
「俺はずっと優子以外に考えられなくてさ。堂々と優子の隣にいられるような男になろうって、頑張ってきたんだけど」
「正樹……」
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