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そう思いながら待っていたら、ふと視線の先にスラッとした美形な男の子が現れた。
薄いグレーのチェスターコートに白のニットセーター、黒のパンツ。スタイリッシュかつ爽やかな服装で歩くその男の子は、携帯片手に美術館を見上げ、そのまま視線を下げた流れで私を見つけると、あっという顔をして急いで駆け寄って来た。
亮弥くんだった。
「すみません、遅くなって、あの……」
「ごめんなさいね、お姉さんから聞きました。他に予定入ってたりしなかった?」
「大丈夫です。でも今朝突然言われてビックリして……」
「そうだよね。ごめんなさい。私は一人で大丈夫だったんだけど」
「いえっ、俺は全然っ! どうせ暇だし、大丈夫です!」
「でも美術展なんて興味ないでしょ?」
「えっと……」
「コレなんだけど」
私は美術館の前の掲示板に貼られたポスターを指差した。亮弥くんはそれを眺めてウーンと考え込み、
「あのでも、優子さん観たいんですよね?」
「そうだけど、私はまた後日でも……」
「それじゃ、観ます!」
「えっ、大丈夫?」
「美術展とか観たことないけど、優子さんが観たいなら、一緒に観ます!」
気を遣わせているかなと少し心配になった。でも、最悪楽しんでもらえなかったとしても、若いんだし経験としてアリだろう。
「それじゃ、おつき合いよろしくお願いします」
そう言って笑うと、亮弥くんも嬉しそうな笑顔を見せた。
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