第1章 灯台守《とうだいもり》のパラディ先生

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数年前まで陸の灯台(landmark beacon)は、航空機の安全運航に無くてはならない地上施設でした。 夜は山岳地帯などの危険な地形が背景に溶け込んでしまいます。 月や星のない闇夜に自機の位置を知るため、灯台は大いに役立ちました。 いったい何人のパイロットが、ケイン灯台の放つ橙色の光に助けられたことでしょう。 今日ではAMラジオと同じ中波の電波を使用して、位置を教える電波式航空灯台(Non-Directional Beacon)が国中に設置されています。 電波の来る方角を針で示す自動方向指示器(Auto Direction Finder)という計器を使えば、雲の中でも闇夜でも、正確に航路を飛ぶことが可能になりました。 航空灯台は用済みとなり、施設の老朽化や人員整理を理由に次々と閉鎖されたのです。 他の灯台が次々と廃止されるなか、パラディ先生は仕事を辞めませんでした。 後任はいません。 彼が仕事を終える日、国内最後の航空灯台の灯は消えるのです。
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