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マルクは学校を卒業すると村を飛び出し、行方さえ知れませんでした。
そんな彼が5年前に突然、腕の良い大工となって帰って来たのです。
大工になった青年はパラディ先生に会うつもりで灯台へ行きましたが、さんざん迷惑をかけた恩師と顔を合わせるのが恥ずかしくなりました。
そこで石壁にメッセージを刻みつけたのです。
「公共の施設に傷をつけてはいかん」
数日後、パラディ先生はペスをお供にマルクの仕事場へ行き、昔のように教え子を叱りました。
見えない目を真正面に向け、背筋を伸ばして立ちます。
慌てたマルクが謝罪すると、先生は彼の肩に手を置いて首を左右に振りました。
「そんなことも教え損ねたダメ教師の面を見てやりたいと思ったが、あいにく目がにごってしまってね。鏡に映る自分の顔すらも見えないよ」
ペスの目に映る先生の顔は眉こそ寄せられていたものの、口の端がわずかに上がっておりました。
言葉とは裏腹に、なんだか誇らしげにさえ見えます。
「立派な大工になったそうじゃないか」
ペスは主人の足元にすわり、肩を抱き合う二人を長いこと見上げておりました。
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