マリア

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 青(あお)くんという同じ高校の三年生だ。サッカー部の副部長でありながらイケメンだった彼は、付き合い始める前からマリアと並んで学校では有名人だった。マリアと青くんにそれぞれ片思いをしていた人たちは、二人が付き合いはじめたと知ると、お似合いすぎて割り込む余地がないとあきらめたらしい。 「桐澤(きりさわ)のこと全然キョーミなかったんだけどなぁ」  青くんがポテトチップスをつまみながら、マリアとの話をしてくれたことがあった。つい最近のことだ。  彼はマリアに会いに家へ来たのだが、マリアのケータイに女友達から失恋の連絡が急に入り、そのまま友人のもとへ行ってしまった。するとなぜか青くんは帰らずに僕の部屋にやってきたのだ。未来の弟と仲良くなった方がいいだろ、だとか言いつつ、僕がおこづかいで買ったうすしお味のポテトチップスを食べたのだった。  あぐらをかいてカーペットの上に座り込んだ僕らははたから見たら仲良しみたいだった。 「僕も桐澤だから、姉さんのことは名前で呼んでくれたほうがわかりやすくていいんだけど」 「恥ずかしいからダメだ。お前をトオルと呼べば問題ないだろ」  そこで青くんが話したのが彼とマリアの出会いだった。実はすでにマリアから聞いていたのだけれど、知らないふりをして青くん視点の運命の出会いを聞いた。     
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