マリア

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 なぜボールを蹴ろうとしたのか、マリア自身が言うには「噂のイケメンに手渡すのは恥ずかしかったから、遠くに蹴飛ばせば接触しなくて済むかなって」ということだった。多分、前からお似合いだと勝手に言われてきた相手といざ向かい合い、急に意識してしまって、必死に考えた結果そうなってしまったんだと思う。意外と初対面では人見知りな一面を持ち合わせているのだ。  青くんはその時からマリアのことを自然と目で追うようになった。どんな人なのだろうと気にかけてしまって、いつの間にか好きになっていたのだとか。  告白は出会いから一か月後、青くんからだった。  弟の僕に話さなくたっていいのになあ、と最後の大きなポテトチップスをひとかけら口に運んだ。青くんが空になった袋を残りかすが落ちないようたたんでゴミ箱へいれた。そのまま何をするでもなく視線をさまよわせ、言いにくそうに切り出した。 「そろそろ誕生日じゃん」  あと一週間で十二月二十日。マリアの誕生日だった。 「桐澤が欲しいものってわかんないんだよな。周りの女子に合わせて、カバンとか服とかアレコレ欲しいって軽く言ってるのは見るけど、ほんとはそんなの欲しがってない気がして」  ふーん、と何でもないように相槌をうって、胸の内では感心した。青くんはマリアのことをよくわかっている。彼女は気の毒なくらい物欲がない。  おかげで彼は誕生日プレゼントをどうしたらいいのか困っているのだった。きっとこの話がしたくて僕のもとへ来たのだろう。 「トオルは一番近くにいるだろ。何か、こう、ヒントみたいな、ないか」     
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