マリア

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 時間つぶしに残った宿題もすませて、一冊の本を取り出した。それをはじめから終わりまで読むと二時間が経っている。最初に読んだときは四時間くらいかかったのだが、何度も繰り返し読んでいるのでどんどん早く読めるようになっていた。純文学のお手本のようなその本はかた苦しい文章で主人公の一生をつづっている。特別有名な作品でもない。とてつもない感銘を与えるストーリーでもないが、暇つぶしには役立つのだ。  スマホに届いたメッセージを確認して、昼食を作ろうとキッチンに移動した。チャーハンとわかめスープを三人分作って、テーブルの上に置きラップをかぶせる。両親は午前だけ仕事だと言っていたから、僕がご飯を用意すると約束していた。自分の分はたいらげて皿も洗った。  やらねばならないことが済んだので、自分も適当に着替えて外に出た。最寄りの駅から五駅離れたところまで電車で移動する。またメッセージが届いたことをつげる電子音がポケットの中で鳴った。降りた駅から歩いてこのあたりで一番栄えている大通りへ向かった。  大通りの端にある映画館まで歩いてみようとふらふらしていると、通り過ぎる女の子たちの会話が耳に入った。
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