マリア

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 彼女たちから「桐澤さん」と聞こえ、続いて「青くん」とも言っている。マリアたちと同じ高校の生徒なのだろう。そして多分、この辺で二人のデートを目撃したのだ。  僕はそのまま見知らぬ女子がきた方向へ進む。街はクリスマスをむかえようと赤と緑の装飾が目一杯され、厚手の服を着こんだ男女は素手を重ね笑いあう。子供は自分のもとに届くプレゼントを想像してはガラスケースの中を眺め、気分をもりたてるように鈴の音の混ざる音楽がどこからか流れていた。  映画館の近くにきた頃には一四時を過ぎていた。そろそろだろうと思い、あたりを見わたした。  シックな赤色のコートに目が留まる。青くんの好きな色だ。着ているのはマリアだった。隣には紺色のロングコートをまとい、かっこつけた青くんがいた。ただでさえかっこいいのでキザな雰囲気すらでてしまっている残念さは青くんらしい。  見つからないようそばに近づいた。映画館の近くにたたずんでいるだけの二人の姿はドラマや映画のワンシーンを彷彿とさせた。
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