それをデートとは言わない

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 手元の紙を開いてみると、『いち』と書いてあった。  数字の『1』のことだろうか。  葵に渡した紙を除き込むと『に』と書いてあったので、多分数字のことだろう。 「わー僕『いち』だよ!」 「僕は『に』だよ!」  そう言った双子を見て、少し驚いた。  あの双子のことだから、同じグループになると思った。  あの双子は磁石のようにいつもくっついている。  新入生歓迎会で鬼と逃げに分かれた時も少し意外だったが、後でデートに行くために分かれたのだと思ったら妙に納得してしまった。  だが、今回は後で一緒になる訳でもないのに分かれた。  今までそんなことはなかったので、驚いたのだ。 「あ~、オレは『いち』だね」 「私は『に』ですね。」 「僕は『いち』だよ」  げっ、会計と蘭と一緒か。  面倒くさそうだ。  侑李と葵のいる『に』の方が断然楽そうである。 「葵と五十鈴は?」 「俺は『いち』だ。」  俺はそう答えるも、葵は答えない。  まるで興味がないらしい。  ずっとそっぽを向いている葵に、もう答える気がないのだろうと判断したのか、蘭が紙を除き込む。 「葵は『に』だね!じゃあ『いち』の僕たちから先に入ろっか!」  蘭はそう言ってお化け屋敷に向かって歩いて行くが、手が少し震えているのは見間違いではないだろう。  そんなに嫌なら行かなきゃいいのに。  そこまで、萌え観察がしたいのか。お化け屋敷に入ったら恐怖でそんな余裕はなくなる癖に。  『いち』は、俺と蘭と会計と双子弟の黒亜だ。 だ。  面倒そうなメンバーだが、はぐれないように見ておこう。  俺は夜目がきくので、お化け屋敷は好きではない。  大体どんな仕掛けがあるのか、お化け屋敷で決して見てはいけない暗黒の部分まで見えてしまうのだ。  つまり、お化けより仕掛けの構造が先に見えてしまうので、全く怖くないどころか、監視カメラに笑いかけられるくらいの余裕はある。  だからこその蘭と黒亜の監視だ。  こんなお子様に迷子になられたら、後が大変すぎる。  ちにみに、俺の警戒対象は会計だ。  暗闇でなにされるかがわからないからだ。  俺は重い足取りでお化け屋敷に向かった。  
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