それをデートとは言わない

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 お化け屋敷に入ったはいいのだが、早速蘭と黒亜が怯えてるのだ。  俺の服の裾を震える手でぎゅっと掴んでいる。  シワができそうなくらいのおもいっきり掴んでいるので、もう少し優しく掴んで欲しいものだ。  高校生にもなって作り物と分かりきったお化け屋敷を怖がるのはどうかと思う。  それを蘭たちに告げたら、「作り物とわかっていても、怖いものは怖い!」「もしかしたら本物がいるかもしれないじゃん!」と言い返されてしまった。  俺にその感覚はよくわからない。会計も俺と同意見のようだ。  そもそもお化け屋敷に本物がいたとして、それが人に危害を及ぼす存在ならば、そのお化け屋敷は営業出来ない。  怖いならば、夜目を鍛えればいいと思う。  見えてればなにも怖くない。  灯りのあるところ程ではなくても、幽霊やお化けなどと言うようなものの心配をすることはなくなる。  ある程度の仕掛けまで見えるので、例えば、現在蘭の左側から首が近づいていることもわかるのだ。 「ぎゃあぁぁー!」  ほらな。  そんな悲鳴をあげるくらいなら夜目を鍛えるべきだ。  その拍子に蘭は服の裾ではなく腕をがっちりと掴み、蘭の悲鳴に驚いた黒亜も腕を掴んだ。  男にそんなんされてもうれしくねぇよ。  どれだけ容姿が女子みたいでも、男であることに変わりはないのだから。  だが、会計はその様子を微笑ましそうに見ているので少しイラッときた。  そして何を思ったのか、俺の首に巻きついて来た。 「オレもまぜてよ。」 「おい、離れてください。」 「やだね。それじゃあ振り払ってみてよ。」  無理だ。  このビビりどもに両手をがっちりと拘束されているので、振り払うことなど出来ない。 「暑いです。離れろ。」 「え~、まだ5月だよ~」 「もう5月だボケ。」 「酷いなぁ。オレ、一応先輩だよ?」 「知ってます。」 「ならもう少し敬ってよ。」 「そうして欲しいなら離れてください。男にくっつかれて喜ぶ趣味はないんで。」 「オレは嬉しいよ?」  そう言ってもっと背中に張りついてくる。  なんだか手の動きが怪しい。  ぞわぞわして鳥肌が立つのを抑えながら、お化け屋敷を歩いていった。
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