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「また行き止まりだね~」
会計が呑気な声をあげる。
さっきから行き止まりばかりで、ろくに前に進めている気がしない。
道を決めているのは蘭と黒亜だ。
この二人はまだ俺の腕から離れていないが、道を決めるのだけはやりたいと言ってやっている。
それで俺は通ったところを脳内マッピングしている訳だが、外観からみたお化け屋敷の広さから考えて、逆に何故これほど進まないのかという程進んでいない。
全ての道を網羅するつもりなのだろうか。
それどころか、一度通った道までもう一度通ろうとするのだ。
「お前ら壊滅的な方向音痴なんだな……。」
そう呟いた俺の言葉に、蘭が素早く反応した。
「違う!お化け屋敷じゃなかったらこんなに迷わないもん!」
「じゃあお化け屋敷の中は俺に道案内をさせてくれ。」
「嫌だよ!五十鈴が道案内したら迷路じゃなくなっちゃうじゃん!」
当たり前だ。迷いたくないから俺が案内するんだよ。
もうそろそろ外へ出たいのだ。
この陰気臭い空気にもいい加減飽きてきた。
外の爽やかな空気が吸いたい。
「じゃあ、この分かれ道で正解しなかったら俺は一人で帰る。」
「い、五十鈴がいなくても帰れるし!お化けなんて怖くないし!」
ぶるぶる震えながらそんなこと言ったって全く説得力がない。
そこで会計が口を出した。
「あ、待って。オレも帰りたいからリンちゃん連れてって」
その言葉に蘭と黒亜が青くなる。
「えっ、嫌だよ!そしたら僕たち本気で帰れなくなっちゃう」
そう言ったのは黒亜だ。
蘭も口には出さなかったものの、流石に黒亜と二人では不安なようだ。
そんな二人を見て、俺は溜め息をつく。
「……この分かれ道は選ばせてやるけど、これを間違えたら俺は自分で道を選ぶ。」
蘭と黒亜はまた更に青くなる。
それを見て俺は言葉を付け足す。
「でも、後をついてくるのは構わない」
そう言った瞬間、二人の顔に安堵が広がった。
もうこれ以上、道選びでどうこう言うつもりはないようだ。脅した甲斐があった。
同時に、俺もほっとした。
これでやっと外に出られる。
ただ、やはりトラブルは俺を好いているらしい。
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