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後ろから、何かが走って来る気配がした。
俺より少し遅れて会計が気付き、後ろを振り返った。
その動きに反応して、蘭と黒亜も異変に気がついたようだった。
そしてそいつ、ゾンビのようなやつは叫び声をあげ、走るペースを上げた。
蘭と黒亜は壊れた人形のように、ぎぎぎっと首を後ろに向ける。
「……ひっ、」
「うわあぁぁー!」
蘭が短い悲鳴をあげ、黒亜はそのまま走り出してしまった。
アレを追わないと絶対に迷子になって出てこれなくなる。
だが、蘭は恐怖で固まってしまっている。
仕方なく蘭の腕を振りほどいた。
「……ちっ、俺は黒亜を追う。お前らは自力で出てきやがれ。」
そう蘭と会計に言うと、返事を待たずに走り出す。
あいつ何も考えずにただひたすら走ってるから、速い。追い付けない程ではないけど。
それにしても、高校生にもなって仮装した人間にビビって迷子になるとか、そんな傍迷惑なことしないで欲しい。
そしてそれに巻き込まないで欲しい。
すぐに俺と黒亜の距離は縮まった。
黒亜に追い付き、その手首を強く握る。
何が起こっているのかわからないのか、俺を見て呆けている。
「勝手に一人で走り出すな。お前が迷子になって困るのは俺たちだ。」
「……っ!ご、ごめん!」
やっと我に帰ったようだ。
だがまだ体は震えているし、目はいつ涙が溢れ落ちてもおかしくないくらい潤んでいる。
いくらなんでもこれは怖がりすぎじゃないか?
蘭でもここまで震えていなかった。
もしかして、何かトラウマでもあるのだろうか。
「ほら、落ち着けって。俺は側にいるから。」
あまりにも怯えているので、そっと黒亜を抱き寄せる。
なんだか子犬のようだ。
暫くそのままにしていると、段々と震えが収まってくる。
全く、何故お化け屋敷に入ったんだ。
こんな怖がり方をするなら、絶対に入るべきではなかった。
それくらい本人が一番わかっているだろうに。
トラウマがあるなら、こんな事態に陥る前に断るべきだった。
こうなってくると、白亜の方も心配になってくる。
白亜と黒亜は似ている。
同じ人間ではないことはわかっているのだが、黒亜がこうでは白亜もこうなっている可能性を捨てきれない。
とりあえず、こいつをここから出してやらないと。
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