それをデートとは言わない

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「ほら、歩けるか?」 「う、うん。」  やっと震えの収まってきた黒亜を開放する。  すると変わりに黒亜は俺の手をぎゅっと握った。  俺は安心させるように、その手を握り返す。 「とりあえずここから出るから、この手を絶対放すなよ。さっきみたいに勝手に走ったらダメだぞ。」 「わかったよ」  俺は黒亜の手を掴んで歩き出す。  黒亜の足取りは覚束無いが、歩けるだけマシだろう。  俺は真っ直ぐ出口へ向かう。  出口へ続く道は、仕掛けを見ていればなんとなくわかる。  入り口へ戻ってもいいのだが、出口のがほんの少しだけ近そうなのだ。  あれだけぐちゃぐちゃに歩いていて、よく半分も進むことができたなと思う。  ただ出口が近いかどうか、正確なことは言えないから正しいかはわからないのだが、どうせなら出口から出たいなという俺の勝手な希望により、出口へ向かうことにした。  もうこのお化け屋敷に入ってから30分は経過したが、出口へ真っ直ぐ向かうならば10分もかからないであろう。  俺は黒亜のペースに合わせて歩いた。  あれからも、無遠慮に驚かしてくるお化けたちに黒亜はずっと恐怖していた。  もう少しこちらのことを考えて欲しいと思ってしまうが、ここに入ったのは俺たちの責任なので、お化けにキレるのは筋違いだ。  イライラを抑えつつ、黒亜を近くから驚かそうとしたお化けに殺気をぶつける。  お化けはその殺気に怯み、硬直した。  その隙に黒亜を引っ張ってその場を離脱する。  こちらを追ってこなかったことに安堵して、そのまま歩みを進めた。  蘭と会計は大丈夫だろうか。  まあ、蘭の怖がり方は常識的な範囲だし、会計もいれば多少迷っても、おそらく迷路は抜けられる。  侑李たちはどこまで進んだのだろう。  葵は迷路を抜けることを手伝うことはきっとない。  だが侑李がいれば、迷わず脱け出すことはできるだろう。  ただ、向こうもここと同じで白亜が道を選んでいる可能性がある。  もしそうならば、進むペースは俺たちと同じくらいか、侑李が少しでも道を教えていれば、俺たちに追い付いているかもしれない。  白亜の状態が気になるが俺は止まることなくそのまま歩いた。
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