それをデートとは言わない

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 このお化け屋敷、全く楽しめない。  いや、もともと俺はお化け屋敷なんて楽しめないんだけども。  それにしても酷い。  遊園地の娯楽施設なのに、この緊迫した空気はなんだ。  大体、男だけでお化け屋敷に入ることが間違いなんだ。  怖がりをかわいいに変換できるのは女子と子供だけだ。  まあ、黒亜の場合は見た目が女子とか子供に当てはまりそうだから、かわいくはなくても気持ち悪くもない。  これが侑李だったら気持ち悪い一択だった。  侑李がこんな風になる可能性はゼロに等しいけどな。  手を握って俺の少し後ろを歩く黒亜を見る。  ちょうどこっちを見ていた黒亜と目があった。  不安そうに瞳を揺らしながら、ゆっくりと口を開き、たどたどしく喋りはじめた。 「あの、ね。僕、暗いところが苦手なんだ。」  それは見てればわかる。  しかし、お化けやら幽霊やらではなく暗いところ(・・・・・)なんだな。 「理由を聞いてもいいか?」 「う、うん。あのね、僕、小さい頃に暗いところに閉じ込められたことがあって」  暗いところが苦手になる原因としたらありがちだな。  しかしこいつはお坊っちゃんだろう?  田舎のやんちゃ小僧と違ってばあちゃんにお蔵に閉じ込められるなんてこともないだろうし。  暗いところに閉じ込められるような事態に陥ることがあるのだろうか。  まあ、そこまで踏み込んだことは話してくれないだろう。  聞くつもりもないし。  そんなこと聞いて事態が悪化したら目も当てられない。 「それで、暗いところに入ると、怖くなっちゃうんだ。どうしても、思い出しちゃうんだ……」  その言葉でまたそれを思い出してしまったようだ。  手を握る力が強くなる。 「それじゃあ、なんでお化け屋敷なんかに入ったんだ」 「それは……みんながいれば大丈夫かなって思ったんだ。ダメだったけどね……」  そう言ってまた俯く。  いつもの愉快犯の面影はまるでない。  こいつにもこんな顔ができるのか、と少し驚いてしまう。 「白亜も暗闇は苦手なのか?」 「え、ううん。ハクは大丈夫だと思うよ。」  じゃあこいつのトラウマが起こったとき、白亜と黒亜は一緒にいなかったのか。  俺の頭には、どんな事件だったのか、とある仮説が浮かんだ。
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