それをデートとは言わない

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 そうは言っても、あまりにも馬鹿げた話だ。  自分の経験から思い出してしまったんだろう。  そんなこと、そうそう起こる筈がないのに。  そう思ってすぐに思考を切り捨てる。  前の方から人の足音と声がした。  足音は三人。雰囲気から葵と侑李がいることはわかる。  となるともう一人は白亜だろうか。 「早く出たいよ。この道で合ってるんだよね?」 「えぇ合っているはずですよ。ですからもう少し静かにしてください。もう少し行ったところで右に曲がります。」 「このお化け屋敷、いくらなんでも長すぎだよう!」 「時間がかかったのはあなたが壊滅的な方向音痴だからでしょう。」 「そんなことないもん!ゆーちゃんが教えてくれなかかったからじゃん!」 「頼まれてませんし。そもそも私が教えようとして聞きたくないと耳をふさいだのはあなたでしょう。」 「そうだけど!こんなに苦労すると思わなかったんだもん」 「私はこうなることがわかっていたので道を教えようとしたのです。」 「もう!言ってよ!」 「何度も言いましたとも。あなたの耳は飾りですか?」  白亜と侑李と声は聞こえないが残り一人は葵だろう。  お化け屋敷には似合わないほど喋り声がうるさい。  白亜はやはり黒亜のようにはなっていなかったようだ。  元気に侑李と言い合いしてるな。  黒亜は白亜を見た瞬間、そちらに向かって走り出した。 「ハク!」  そのまま白亜に抱きつく。  やっぱりいつも一緒にいる兄が一番安心するんだな。  ここで白亜たちに会えて良かったかもしれない。  あとお化け屋敷は四分の一程度だ。  兄と一緒なら、もっと落ち着いて歩くことができるだろう。  そんな兄弟を横目に見ながら、侑李と葵に向かって話しかける。 「お化け屋敷は楽しめたか?」 「いいえ。おそらく貴方と同じ理由で楽しめませんでした。」  やはりか。  侑李は俺と同じ環境で育ってきた。  まあ、体術に関して言えば圧倒的に俺のが上だけど。  侑李のようなもやしには負けん←体格事態は負けている。 「多分葵もそうだよな。葵は夜行性だし。」 「うん。」  やっぱり俺たちにお化け屋敷は向いていないな。
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