それをデートとは言わない

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「なあ、白亜に異変はなかったか?」  アレを見れば、なかっただろうとは思う。  ただ、確認しておきたかったのだ。 「?いいえ、特にありませんでしたよ。」 「そうか。なら、いいんだ。」  侑李が不思議そうな顔をする。  この顔を見れば、白亜はいつも通りだったのだろう。  やはり、黒亜だけのトラウマか。  どうしてなのか気になるけど、他人の癖にそんなこと軽々しく聞けないので、そのまま黙りこんだ。 「どうかしたのですか?」 「いや、なんでもない。」  侑李はまだ疑わしい表情をしていたけれど、それ以上追究することはなかった。  前を進む双子を見ると、分かれ道でなにやらどちらに行くか迷っているようだった。 「うーん。こっちかな!」 「そうだね!きっとそうだよ!」  俺と侑李は揃って溜め息をつく。  またしても壊滅的方向音痴が炸裂していた。  その道を進めば、さっき歩いていた道にループしてしまうだろう。 「おい、双子。逆だよ。そっち行ったら帰るのに2倍は時間がかかるぞ。」 「「え!?」」  二人揃って目を丸くする。  いい加減自分の方向感覚を自覚した方がいいと思う。  二人は顔を青くして俺が指した道に歩いていった。  黒亜もさっきまでの怯えなどなかったことのようにいつも通りだ。  元に戻って良かった。  出口が見えてきた。  双子が同時に走り出す。 「「外だー!」」  一時間ぶりに見た太陽の光りだ。  双子はぴょんぴょん跳び跳ねている。  たった一時間光りを見ていなかっただけだが、凄く眩しく感じる。  にしても、お化け屋敷の中とこの遊園地の雰囲気は正反対と言っていい程違うな。  まるで別世界だ。  双子には、こっちの方が合っている。  はしゃいでいる双子を見てそう思った。 「そう言えば、蘭と茅野さんはどうしたんですか?」  あぁ。そういえば。  完全に忘れていた。 「多分、もうすぐ来るんじゃないか?」  俺たちより早くついているということはないだろう。  俺たちは最短距離を歩いてきたのだから。  だが、それほど時間はかからないであろう。  その5分後、蘭と会計は出口に姿を現したのだった。
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