それをデートとは言わない

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「もう僕お化け屋敷には絶対に入らないよ。」  そう呟いたのは蘭だった。  いや、お化け屋敷に行きたいと言ったのはお前だっただろう。 「あんなに怖いと思わなかった!作り物には見えないよ!」  確かに、あのお化け屋敷は割と本格的に作られていた。  道も長かったし。  だが作り物に見えなくても作り物であることに変わりはない。 「オレは蘭ちゃんとお化け屋敷回るの楽しかったよ~」  会計がそう言ったとき、蘭がまたぶるりと震えた。  なんだ、セクハラでも受けたのか。 「と、とにかく、次のアトラクションへ行こう!」  そうして俺たちは、激しいアトラクションは避けてゆっくりと回った。  学園の貸し切りなので、並ぶことはほとんどなく、たくさんのアトラクションに乗ることができた。 「そろそろお昼ご飯食べようよ~」 「お腹すいた~」  12時を少し過ぎた頃、双子がそう言った。 「そうだね。どこがいい?」 「「あれがいい!」」  双子は揃って指をさした。  あれは……ハンバーガーか。  お坊っちゃんたちには馴染みがないものだろう。  いや、だからこそか?  俺はかなり庶民的な生活をしてきたので、馴染みはある。  だが、ここにいるお坊っちゃんたちにとっては物珍しいものなのだろう。  双子の目がキラキラ輝いている。  蘭と会計は不思議そうな顔をしていた。  食べたことがないんだろうな。  侑李は俺が連れ出して食べに行ったことがある。  だが神崎家のお坊っちゃんをそう簡単に連れ出すことはできないので、数える程しかないのだが。 「お前ら、あれがなにか知ってるのか?」 「ううん、知らない」 「面白そうだなって」  やっぱりか。  まあいい。ここで双子が何を食べようが俺の責任ではないからな。 「他の奴等は?ここでいいの?」 「オレはいいよ~」 「僕も!」 「構いません。」  こういうのを食べるのは大体親が止めてることが多いんだけど、本人たちがいいならいいか。 「じゃあそれでいいか。」  俺がそう言うと、双子はすぐに走り出した。  あいつらにハンバーガーの注文なんてできる訳ねぇ。  俺はすぐにそれを追いかけた。
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