それをデートとは言わない

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 この学園にはそういった写真を売っている奴等がいる。  しかもそれを部活動としてやっている奴もいる。  写真部や新聞部だ。  表向きは普通に活動しているのだが、実際は人気生徒の写真を売ったりもしている。  しかしそれは特に禁止されているわけではない。  というか禁止したら大変なことになる。  写真を欲しがる生徒の中には実家の権力が強い生徒もいるので、下手に禁止すれば暴動が起こる。  なので、被写体になっている生徒も、写真くらいならいいかぁ、と思って見逃しているのだ。  モデル料はちゃんと貰えるし。  ただ、俺はちょっと遠慮したい。  その写真を使ってナニをされるかわからない以上、勝手に写真を撮って売られるのは怖い。  まあ、俺のような表向き庶民が何を言ったところで、それが無くなる訳ではないのでもう諦めているのだが。  それに、禁止したところで、値段の釣り上がった裏取引が行われるだけなので、もうどうしようもない。  対策と言えば、せいぜい侑李が部費を削っているくらいだ。 「諦めなよ」  俺の考えを読んだらしい葵が、そう呟いた。 「お前だって撮られただろ」 「慣れたし。」 「慣れでどうにかなるものなのかよ。」 「なる。」 「いつになっても嫌なものは嫌だよ」  葵は慣れたというより、最初から気にしていなかったのだろう。  写真に撮られたところで自分に直接的な害はないと。  だが、俺にそんな考え方はできん。  写真の俺も俺であることに変わりはないのだ。  モデル料が貰えると言っても、それを仕事としているわけではないので、金はいらないから写真は売らないで欲しい。 「侑李、写真部の部費削っといて」 「わかりました。」  周りに聞こえるように言ったので、何人かが顔を青くした。  お前らが写真部だな。  削って欲しくなかったら、売る写真を無くせとは言わないから少なくしろ。 「なんでそんなに写真撮られるのが嫌なの?」 「自分からカメラにピースしてる奴にはわからないだろうな。」 「別に減るものでもないし。」 「減る。俺の精神力がガリガリと減る。」  逆に何故平気なのかわからない。  蘭の顔を見てそう思った。
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