それをデートとは言わない

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 昼食を食べ終えた俺たちは、またアトラクションに乗りはじめた。  並ぶ必要がないこともあって、全制覇できそうな勢いだった。  ただ、絶叫系は避けている。  おそらく、双子や蘭が苦手なのだろう。  絶叫系とお化け屋敷が苦手って、女子か。  だが、絶叫を避けている人物は、実はもう一人いる。  持ち前のポーカーフェイスで誤魔化してはいるので、誰にもバレてはいないが。  そしてその人物とは、ズバリ侑李だ。  意外に思うかもしれないが、こいつにはちょっとしたトラウマがあるのだ。  それは子供の頃、俺とお忍びで遊園地に行った時、俺が無理矢理ジェットコースターに乗せてしまったのだ。  それも一番怖いと言われている奴に絶叫に乗ったことのない小学生を。  それだけでもトラウマものな気もするが、それだけではなかった。  なんとそのジェットコースターに不具合が起きて一番高い所で止まってしまったのだ。  侑李がガチ泣きしてるのはそれ以来見てないかもしれない。  いや~なんとも愉快だっ……ん゛ん、可哀想なことをしてしまった。  俺は絶叫系のアトラクションに恐怖心を抱いていなかったので、全然平気だった。  以降、遊園地にもほとんど行かなくなってしまった。  行ったとしても、絶叫系には絶対に乗らず、俺は一人寂しく乗っていたのを思い出す。  ジェットコースター、知らない人と乗るとあまり楽しめないって本当だね。  めっちゃ気を使う。  それは置いておいて。  今ならこいつらに仕返しするチャンスかもしれない。  俺を散々振り回したのだから、せめてこれくらいの仕返しは許して欲しい。  ちょうどもうすぐジェットコースターがある。  あれに乗せて見るか。 「ねぇ、次あれ乗ろうよ。」  俺はジェットコースターを指さして、笑顔でそう言った。  その言葉に固まったのは若干4名。  一人はほとんどわからないけど。 「ね、ねぇ五十鈴?あれはやめておこうよ。」  蘭の言葉に双子が高速で首を縦に降っている。 「俺今日は散々お前らに振り回されたんだからさ、一回くらい俺の言うこと聞いてよ」  蘭たちは、俺を振り回してきた自覚があるのか、何も言葉を返して来ない。 「みんな、いいよね?」  笑顔で問いかけると、全員頷くことしかできないのだった。
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