それをデートとは言わない

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「「行こう!」」 「え、待って、俺もうここでお前らとは別れるから。」  そう言っても満面の笑みの双子は手を離さない。 「行くよ!」 「ちーくんも!」 「うん、いいよ~」  ぐいぐいと引っ張られる。  こいつチビの癖に力が強ぇ。  振りほどくこともできるけど、あまりしたくないし。 「五十鈴、諦めてついて行きなよ。僕の分まで楽しんでね!」  あいつか!  あいつは俺を自由にする気はないのか。  隣で侑李も笑っている。  双子も離す気はないらしい。  俺は本日何度目かの溜め息をついた。  *  その後、結局侑李と蘭を抜いた五人でアトラクションを回った。  結果、絶叫系以外のアトラクションは目の前にあるこれに乗れば双子は全制覇だ。  双子は(・・・)ということは、俺たちはいくつか乗っていないものがある。  ここに来るまでの間、明らかに高校生が乗るべきアトラクションではないものもあった。  双子は、制覇するために何も気にせず乗っていったが、俺たちは流石に乗る気にならなかった。  いくつか無理矢理乗せられたりしたが、全てではない。  双子は小さな子供用の遊具に乗っていても、違和感がないのだ。  遊園地の職員の人ですら微笑ましそうに眺めるくらいに。  あれは本当に高校二年生なのだろうか。  そんな見た目も中身も幼稚な双子のお守りはなかなか大変だった。  それになにかとトラブルに巻き込まれそうになる会計も面倒だった。  それもこれに乗ったら終わる。  そう目の前にあるこれ。観覧車である。  だが、観覧車に着いてから双子の様子が怪しい。  なんだか嫌な予感がする。  一体何を企んでいるのだろうか。 「あ!四人乗りだね」 「一人余っちゃうね」  そうか、ちょうどいい。  俺はここで休んでいよう。 「俺はこれ乗らなくていいや。ここで待ってる。」 「俺も」  俺に同調したのは葵だ。  遊園地に着いてから不機嫌度がどんどん増していってる。 「せっかくだから乗ろうよ!」 「ここで座ってるのも、観覧車で座ってるのも一緒じゃん!」  双子がまたもぐいぐいと引っ張る。  もういい加減疲れたが、これが最後。これが最後。
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