日常と混乱の兆し

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「おーい、葵!飯出来たぞ!」  ビーフシチューと数種類の付け合わせが完成し、葵の部屋のドアを叩いている。  俺にビーフシチューを要求しておきながら自分は部屋で寝てるとかマジむかつく。それに今日ビーフシチューを要求されるほど悪いことした覚えがないんだけどな。  その苛立ちをドアにぶつける。八つ当たりごめんね。  その音で起きたのか部屋のドアが開いた。  低血圧っぽい顔で明らかに寝起きの葵。そのためかいつも以上に色気を放ってる気がする。でも表情がとても不機嫌そうだ。うるさくし過ぎたか。 「うるさいんだけど。」 「お前が起きないのが悪い。お前の希望でビーフシチュー作ってやったんだからもっと早く起きろよ。」 「あ、そうなの?ありがと。」  なんか今の今まで忘れてましたって感じの反応だな。俺の苦労はどうなるんだ。  少々落胆しながらリビングに着くと、葵があからさまに不機嫌になった。 「……なんでいるの?」 「五十鈴に呼ばれたんだよ。」  葵がじろりとこちらを睨む。 「用事があったの。俺の部屋でもあるんだから別にいいだろ?」  葵は不機嫌な顔を崩さないまま二人の座っているテーブルにつく。  続いて俺も席につき、食事を開始する。 「で、五十鈴。要件はなんだ?」  食べはじめるなり侑李が聞いてくる。 「転校生が来るのは一週間後だ。」 「思っていたより時間があるな。」 「うん。充分準備ができるよ!」  なんの準備かなんて聞かない。どうせ監視カメラやら盗聴やら犯罪ギリギリのことに決まってる。 「校門には侑李が迎えに行くんだよね?」 「あぁ。多分そうなるな。」 「じゃあ侑李は演技でもいいから転校生を好きになってね?」 「なんでそんなことしなくちゃならん。」 「王道実現のため」 「嫌だね。お前の馬鹿な趣味にいちいち付き合ってられるか。」 「あっれ~?そんなこと言っていいのかな~?じゃあ次は会長×副会長で決まりだね。」 「それくらいの演技してやるからマジでそれはやめろください。」 「じゃあ決まりだね。」  侑李上手いことのせられてやがる。これ後で冷静になったら絶対後悔するやつだ。  ドンマイ、侑李。
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