1539人が本棚に入れています
本棚に追加
「そもそも俺は生徒会に入っているわけじゃないですし、仲間外れにはなりませんよ」
俺は今日デザートに釣られて来てしまったただの雑用なのだ。
そもそも仲間じゃない。
「一人だけ逃げるなんてずるい!」
「僕だってあんな腹の探り合い行きたくないもん!」
いやずるいって。
社交はお前らにとって義務だろ。
「でも五十鈴が来た方が楽しそうだよなァ」
「楽しそうとかそんな理由で決めないでくださいバ会長」
「お前夏休みなにするんだよ?」
「寮にひきこもってるつもりですが?」
「よしお前参加決定」
「はぁ!?」
「「やったー!」」
バ会長の唐突な決定に歓声をあげる双子。
混乱する俺をよそに会長は衝撃の事実を告げた。
「あと、夏休みの真ん中あたりで二週間くらい寮閉まるぞ」
「え、」
「今年は工事が入ってるからな」
俺は家に帰りたくないので、去年も夏休みは寮にひきこもっていた。
ここの寮は大抵のものが揃っているのでわざわざ出かける必要もない。
少し外に出るにも完全防備にしなければならない俺はそれが嫌で去年は一歩も寮から出なかった気がする。
葵も家には帰らず、時々どこかにふらりと出かけるくらいで基本は寮にいた。
だから今年もそうするつもりだったのだが、
「工事……?」
「あぁ。今も寮の周りに業者がうろうろしてるだろ?夏休みの間に寮閉めて生徒がいちゃできないところをやるんだとよ」
マジか。
夏休みどこで過ごそうかな……。
中学の頃暮らしてた家だとバレるかもだよなぁ。
本家には絶対帰れないし。
ホテルに泊まるにも金がかかるからそれで消える分、バイトして稼ぐか。
チッ、夏休みはダラダラ過ごせると思ってたのに!
「うちのパーティーは寮が閉まる前だから、迎えに行ってやろうか?」
「いや来なくていいです本当に」
「会長はパーティーの準備で忙しいでしょう?私が行くので大丈夫ですよ」
「なっ、侑李!?」
「じゃあ、頼んだ」
「えぇ」
お前もそっち側かよ!
黒い笑顔でこちらを見ている。
こいつ絶対逃がさない気だ!
「待ってください!俺はパーティーに参加できるような服も持ってないですし、マナーも知りませんよ!?」
「服は貸し出すので大丈夫です」
「マナーは!?」
「あなたなら大丈夫でしょう」
いやまあ確かにマナーは叩き込まれてるから大丈夫なんだけど!
俺の設定上できちゃダメだろ!
「あぁそういえば、この警備に関する書類を風紀委員会へ持って行って欲しいのですが」
「自分で行けよ」
「よろしくお願いします」
にっこりとイイ笑顔の侑李に、断る気も失せた俺は素直に風紀委員室へと向かうのだった。
*
最初のコメントを投稿しよう!