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今日はいつも応接室でくつろいでいるサボリ魔副委員長が珍しく不在だったので、応接室はスルーしてその奥の部屋へと入っていく。
生徒会室と違い、風紀委員室はいつも静かだ。
ふざけている人間がいない。
まあ副委員長はアレだが、基本風紀委員室で仕事をしていないので除外する。
真面目に机に向かい合う風紀委員たちを通り過ぎ、委員長の机までたどり着く。
「これ、生徒会から警備に関する書類だそうですよ」
「あぁ、いつも悪いな」
黒髪の美形が顔を上げ、パサリと書類を受け取る。
相当な仕事量だろうに、疲れ一つ表情に出さないところはさすがだ。
「俺、お茶でも淹れてきますね」
そう告げて返事も聞かずに準備を始める。
どうせこの人に返事を聞いたところで断られるだけだからな。
俺はこの後生徒会室に戻るつもりは微塵もないので、時間は充分にあるのだ。
いつものようにお茶を淹れ、置いてある菓子を適当にだす。
生徒会室ほど種類豊富に兼ね揃えているわけではないが、お茶と一緒にだす分なら充分にある。
淹れたお茶を仕事をしている各委員達の机に配っていく。
全員が丁寧にお礼を言ってくれるところが、生徒会との差だろう。
「大分お疲れでしょう?」
最後に委員長の机へとお茶を置き、そう話しかける。
表情には出ていないものの、どこか疲れているような雰囲気がある。まあ勘だが。
その言葉に委員長はくいっと片眉をあげた。
「そんなことはない。仕事の量は例年とさほど変わらないからな」
「まあ委員長がそう言うならいいですけど」
例年と変わらないって毎年多いってことだろう。
イベントのたびに訪れる風紀委員と生徒会への仕事量は異常だと思う。
「でも夏祭りは外部からの参加がない分、警備は楽なんじゃないんですか?」
「それはそうだが、夏祭りには立ち入り禁止区域に入ろうとする生徒が多いんだ」
「何故です?」
「あの傍迷惑なジンクスのせいだ」
それはもしかして蘭が言ってたひまわりの丘のやつのことだろうか。
それを信じて探そうとして立ち入り禁止区域まで入ってくる奴がいるということか。
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