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「あんなの信じる奴そんなにいるんですか?」
「高校生にもなってどうかと思うが、この学園は恋愛脳が多いからな」
恋愛脳(笑)
まあ確かに、よく考えれば共学校より恋愛に関する話題が多いよなぁ。
ただし男同士、という言葉がつくが。
「ひまわりの丘ってぶっちゃけ存在するんですか?」
「生徒が立入れる範囲では存在しないな」
委員長ならばこの学園の広過ぎる敷地も全て網羅しているのだろう。
その委員長が言うのだから、ほぼ確実に存在しないということだろう。
「どこからそんな噂沸いたんですかねぇ。なんで廃れないんでしょう?」
「それがわかっていたら苦労しない」
「風紀委員が存在しないことを断言すればいいんじゃないですか?」
「過去にそれを行ったことのある委員長もいたが、逆に助長する結果になったそうだ」
「それはまた……」
風紀委員も大変だ。
そもそもこの学園の生徒が恋愛脳でジンクスが大好きなことも原因だろう。
「だが風紀委員の当日の仕事は祭りに参加しながらの見回りだ。立ち入り禁止区域は警備員に任せる。事前準備は忙しいが、当日はそれほど忙しくはならない」
「当日は学園祭より楽なんですね」
「あぁ。このイベントくらいは風紀委員も楽しませてやりたいからな」
委員長のその言葉を聞いていた風紀委員たちは涙ぐんでいる。
風紀委員の委員長尊敬度はすごいからな。
「委員長も参加するんですか?」
「あぁ。そのつもりだ」
「意外ですね。祭りとか嫌いそうなのに」
「祭りには少し、思い入れがあるんだ」
そう言った委員長は、何かを懐かしむように目を柔らげた。
いつも冷徹な無表情か魔王の笑みだから、こんな表情ができることに驚いた。
「どうした?」
どうやらその思考がバレていたらしい。
先程の穏やかな表情は何処へやら、いつもの無表情で睨みつけられた。
「……なんでもないです」
「そうか」
それだけ言って委員長は書類の方へ向いた。
俺は風紀委員室に放置されていた回るイスにすわって紅茶を飲む。
風紀委員は自分の仕事は自分で片付ける、が当たり前なので、こんな風にくつろいでいても誰にも書類を押し付けられない。
生徒会と大違いだ。
カタカタというキーボードの音だけが、風紀委員室に響く。
しばらくしてからふと委員長が口を開いた。
「今回は臨時風紀になれとまでは言わないが、強姦やリンチを見かけたら止めてくれ」
「それは言われなくてもしますよ。見逃したら後味悪いですし」
「通信機は渡さないから、携帯の方に連絡してくれ」
「了解です」
やっぱりこの人は仕事を休む気ないんだなぁ。
将来社畜になってそうだな。
あーこの人は社長になるだろうから社畜ではないのか?
「もうそろそろ帰りますね。俺がここにいても邪魔なだけですし」
「わかった。世話をかけたな」
「いーですよ、いつものことですし」
生徒会の奴らは礼すら言わずに押し付けてくるのだから、言ってくれるだけ嬉しい。
俺はそのまま風紀委員室出て、寮の自室へと向かった。
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