1532人が本棚に入れています
本棚に追加
今日は理事長室に行ってから一週間後。つまり転校生が来る日だ。
俺は絶望していた。今、俺は廊下を歩いているのだ。何故かマリモと一緒に。
「なあなあ、職員室はまだか!?」
「うるせぇ。今向かってんだろ。」
「友達にうるさいとか言っちゃダメなんだぞ!」
俺はお前の友達じゃないとかもう言わない。だって何回訂正しても「何言ってんだ!俺たちもう友達だろ!!」という一方的な友達宣言を貫き通して、俺の言葉は全く聞こえてないようなのだ。
やはり宇宙人に日本語は通じないのだろうか。
さっきからずっとこの調子で、いちいち鼓膜にダメージがくるレベルの声で話しかけてくるこのマリモ。
黒いもさもさの頭に底瓶メガネという俺からしてみればクオリティの低すぎるバレバレの変装。そしてメガフォンボイスに人類皆友達思考。敬語皆無。
もうここまで来れば誰でもわかる。
このマリモは転校生だ。そして悲しいことに正に蘭の言う王道転校生の特徴とバッチリ一致していた。性格も容姿も。
むしろどうやったらそこまで一致できるのかという。
そして転校生はまともであって欲しいという俺の切実な願望は見事に打ち砕かれ、もし転校生がマリモ宇宙人だったら絶対に近づかないという決意さえもが、初日早々無惨に砕け散った。
この世に神も仏もいないのだろうか。あまりに無情過ぎるだろう。
こんなことになって喜ぶのは、この学園に蘭含め2割いるという俺には理解出来ない特殊な腐った人々だけだ。
何故神は蘭を助けたのか疑問でならない。
神は聞いていないのだろうか。「王道もいいけど、非王道で五十鈴総受けっていうのもアリだよね」という蘭の恐ろしい発言を。
こんなことなら俺を助けてくれるかわからない神様より、俺の天使のルナ様に祈っておくべきだった。
そして何故、俺が転校生との接触を極力避けようと思っていたのにも関わらず、今転校生を職員室まで案内するハメになっているのか。
それについては、偶然に偶然が重なって起こった悲劇である。
いつもはそこまで運が悪いという訳でもないのに、今日に限って何故ここまで運が悪いのだろうか。
その悲劇は、今思うと昨晩から始まっていた気がする。
*
最初のコメントを投稿しよう!