夜空の花と林檎飴

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 そのまま侑李の部屋に連れて行かれた俺は、蘭と侑李に浴衣を着付けられた。  和服を着つけるなんて流石に無理かと思っていたが、お坊ちゃん方は家の事情で和服を着ることが多くあるらしい。  浴衣の着付けなどお手の物だった。  俺が着せられた浴衣のベースは黒色。そこに赤と金の装飾が施されていた。  一般の祭にこの格好で参加したら目立ちまくるだろうというレベルで美しい装飾だった。  生地がいいものだと言うことも、触れただけでよくわかる。  なんだかいつもと感覚が違って動きにくいな。  浴衣ってこんなんだったのか。 「五十鈴すごく似合ってるよ!想像以上だ!流石僕!」 「目立ちそうで嫌なんだけど」 「今更だろ」  確かにもともと目立つ上に俺と同じように美しい浴衣に身を包んだ侑李と蘭が一緒なら制服でも目立っただろうけど。 「あとこれとこれも持ってね」  そう言って渡されたのは扇子と巾着だった。 「……いるか?」 「大事だよ!」  だがカバンは持ってきているし巾着とカバン両方はおかしい気がする。 「カバンはここに置いてけ。後で届けるから」  そんな侑李の援護射撃があり、仕方なく蘭が押し付けてきた巾着を受け取る。  持ってきていたカバンから必要なものだけ移動させた。 「準備終わった?」 「一応」 「じゃあ行こう!」  ウキウキとした足取りで蘭が外へ向かう。  蘭の浴衣は名前になぞらえてなのか胡蝶蘭が描かれているがかろうじて男物だ。  侑李の浴衣は紫紺のシンプルなものだ。なのに煌びやかに見えるのは侑李だからか。 「これは注目の的になること間違いなしだね!」 「一人で回ろうかな」 「それは僕が許さないから!それにその格好なら一人のが危ないと思う」 「侑李は嫌じゃねぇの?」 「俺は慣れてる」  生徒会役員なんていつどこにいても注目されるからな。  まぁ今日くらい目立ってもいいかな、なんて思ってる俺はやっぱり浮かれているのだろうか。  *
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