夜空の花と林檎飴

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 * 「うわぁ、やっぱ人多いなぁ」 「これくらいならまだマシだろ」  屋台が立ち並ぶエリアにはやはり人が多かった。  俺たちが現れたことでざわめきが広がり、あっという間に視線が集まった。 「お、お三方が浴衣を……!」 「えっなにあれ美しすぎでしょ」 「五十鈴様は去年浴衣を着てなかったはず……」 「蘭ちゃんかわいー」 「死んでもいい……」  やばい鼻血続出だ。やっぱこれ回りづらいな。 「五十鈴あっち行こー」  こいつは全く気にしてなかった。 「僕綿あめ食べたい!」 「あー……うん。行こうか……」 「綿あめは手が汚れるのでいやです」 「ハイハイ」  集まる視線を気にしないようにしながら歩いていく。  一番側にあった綿あめの屋台で蘭の綿あめを買った。 「美味しくはないんだけどなんかいいよねー」 「美味しくないのかよ」 「まぁね」  ふわふわを頬張る蘭の図は高く売れそうだ。 「あっ、金魚すくいだ!」 「金魚はすくっても飼えないからダメだ」 「えー」 「あっちにしろ」  そう言って俺が指したのはスーパーボールすくいだ。  あれなら生き物じゃないからすぐに飽きられても罪悪感が少ない。  金魚なんてすくっても蘭のもとで3日と生きていられなさそうだ。 「侑李、スーパーボールってなに?」 「あの小さいボールのことでしょう」  こいつらスーパーボール知らないのか……。 「スーパーボールってのはすごく跳ねるボールだよ」 「なんか楽しそうだね」 「家具の多いところで使うのは禁止だからな」  あれは時々予想外のところに飛んでくから無駄に高級な家具にでも当てて壊したら悲惨だ。   ガラス製の高いくせに壊れやすいものとか多いからな。 「五十鈴、ちょっとやって見せてよ」  蘭にそう言われたので俺も一回やってみた。  なんだかすごく久しぶりだ。  7個目がお椀に入ったところで破れてしまった。 「なんか簡単そう」 「そうでもないぞ」  蘭もポイを受け取って挑戦してみるが、すぐに破けてしまった。 「あれ?なんで?」 「少しずつ水につけるからだ。一気に全部濡らせ」  結局蘭は5回もやったのに一回もすくえなかった。店にとってはいいカモだな。  仕方なく俺の取った分を全部渡した。俺も要らなかったし。 「絶対にそれ俺の部屋に持ってくるなよ」 「うん!ありがとう!」  本当だろうか……。
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