日常と混乱の兆し

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 俺が現在いる場所。  世間から隔離された山奥にあるこの清凛(せいりん)学園は、全寮制男子校である。  しかも、金持ちの坊っちゃんが通う、全国有数の進学校だ。  坊っちゃんが通うため敷地が無駄に広く、内装も外装も無駄に豪華。  だから俺が今歩いてる廊下も埃一つ無く、新築と言われても違和感がない。  その上、至るところに職人による細かく美しい装飾が施されている。  中身が小市民の俺は場違い感が凄いと感じる。  そして当然ながら、すれ違う生徒たちのほとんどは金持ちな訳で、服やら靴やらアクセサリーの質はとても高い。  少なくとも、高校生が日常的に着けていていいレベルの品ではない。  だからその金持ちの坊っちゃんたちに、庶民であるということにしている俺がチラチラと視線を向けられるのは少々居心地が悪い。  また、その視線が同性に向けるべき視線ではないことが居心地の悪さに拍車をかけている。  朝から気落ちするような視線をくぐり抜け、たどり着いた教室の扉を開ける。 「「「きゃあぁぁーーー!」」」 「「「うおぉぉぉーーー!」」」  毎朝のように鼓膜が瀕死になれば扉を開けるのが嫌にもなる。  そして、その後の言葉も俺のメンタルを抉るには充分な効果を発揮する。 「五十鈴様!今日も美しいです!」 「抱いてください!」 「いや、五十鈴様はネコ!」 「抱かせろー!」  耳を塞ぎたい。  誤解がないように言っておくと、俺は断じてネコではない。もちろんタチでもない。ノーマルである。  男は受け付けない。  さて、ここまでくればわかっただろうが、ここはホモ、バイ率が異常なほど高い。  金持ちが多い、進学校である、ホモ、バイ率異常。  つまり腐男子の言うところの、  ────王道学園である。
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