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そんなことを考えている間に職員室へと到着した。
なんだか職員室までの道のりが、いつもより長く感じた気がする。
転校生がうるさすぎるせいだ。「友達だからな!」「名前で呼べよ!」とかを永遠に言い続けるのだ。
初対面の生理的に受け付けない奴にそんなことを言われて苦痛に感じない人間などいない。
それに転校生は一年だ。俺より一個下なのだ。
それなのに敬語など使われたことがない。初対面の先輩に対する態度じゃないだろ。
確かに身長はちょっとだけ、ほんのちょっとだけ負けてるかもしれないけど!
転校生に理不尽な怒りを向けながら、職員室の前に立つ。
「じゃあ転校生クン。ここが職員室だ。案内はしたから、俺はもう行くな。」
「茉央って呼べよ!なんでもう行くんだよ!」
いい加減にしろよ。理由なんて決まってるだろうが。それに何故名前呼びに拘る。
「あのね。もう授業始まってんだよ。俺遅刻なの。それにお前の担任であろう教師に会いたくな───」
「──ほう?誰に会いたくないって?」
突如背後から耳元に聞こえた掠れた声。元々ハスキーボイスで美声だから耳元で囁かれるとゾワッとなる。チワワのようにドキッとはならない。
マジで鳥肌がヤバい。
恐る恐る後ろを振り返る。
濡れ羽色の少し長い髪を後ろで緩く縛り、スーツは教師としてありえない程に着崩している。
まだあの腐教師のがちゃんと着てるぞ。
ただし、イケメンなのでなんとなく似合ってしまっているから困る。
注意する人物がいないのだ。まあ、注意したところで、改める気はないのだろうが。
そんな正に反面教師と言われるに相応しいこの教師。この教師こそが1―Sの担任。来栖橙生だ。
会いたくなかった理由は端にこの人といると鳥肌が量産されるからである。
「よォ、五十鈴。オレに会いたくなかったのかァ?」
「いえ何でもないです忘れてください」
あったりまえだろうが!
と、返したいところだけどそんなことをしたらどうなるかわからないのでやめておく。
「フッ、そういうことにしといてやるよ。」
上から目線うざい。見下ろしながら言うので割り増しでうざい。
「なあ、五十鈴ってなんのことだ?」
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