食堂イベント、喜劇か悲劇の始まりか

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「やっぱり嫌だぁーー!」 「うるさいなぁ。もう決めたんだから、文句言わずに行くよ。」  現在は昼休み。  俺たちは食堂の扉の前に立っている。  金持ちなだけあってたかが食堂の扉と言っても無駄にでかいし。豪華だし。  メロンパフェに釣られて来てしまったことを今更ながら後悔してる。  だが、葵を巻き添えにすることには成功した。  今日は俺同様、遅刻したので弁当がない。  葵は基本的に人が多い食堂が嫌いなのだが、半強制的に連れてきた。  今もくっきりと眉間に皺がよっている。  蘭は気にしていないようだが、微量の殺気が漏れ出ているため、周囲の人が少し怯えている。  不良怖い。  いつものことだが、この扉は教室以上に開けたくない。  理由は勿論教室と同じ。  特に今なんて学園で天使と言われている蘭と、近寄り難いが生徒会に並ぶほどの美形である葵が一緒だ。  扉を開ければどうなるかなんて容易に想像できる。  というか何故学校の食堂の扉を開けるだけなのにこんなに気分が急降下するのか。  憂鬱である。 「じゃあ開けるよ。」 「あー、ちょっと待って耳栓。」 「すず、俺にも」  耳栓は常備している。  流石に教室に入るくらいまでなら耳栓無しでもいける。  ただ食堂となると耳栓をつけないと鼓膜が物理的にも精神的にも死ぬ。 「つけた?いくよーっ!」  蘭が一気に扉を開けた。 「「「きゃあぁぁぁーーー!」」」 「「「うおぉぉぉぉーーー!」」」  教室とは比べ物にならないほどの大きな歓声。何倍もの人数がいるのだから当たり前だ。 「蘭ちゃんかわいー!」 「天使様ー!」 「五十鈴様、美し……」 「抱かせろー!」 「うそっ!?食堂で八神様にお会いできるなんて!」 「抱いてくださいっ!」 「お?お?あれはもしや三角関係!?不良+美人×天使?」 「いやいや!強気美人受けで決まりでしょ!!」  耳栓着けててあまり聞こえないが、なんだか不穏な会話がされてる気がする。  例えばほら、堕天使と同じ人種による妄言とか……?  耳栓をしていても騒々しい。  蘭は耳栓もせずに平然と笑顔で手を振ってる。  多分、内心はうるさいと思ってるのだろうが、完璧に隠している。  蘭は結構ボロが多いのでさっさとバレてしまえばいいのに。
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